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会長挨拶

東京都少林寺拳法連盟  西原春夫 会長  年頭挨拶

≪2019年新年会挨拶より抜粋≫

【写真】西原春夫先生

  ただいま東京都連盟会長を今年も委嘱されました西原でございます。年の初めのお忙しい中を、多数の方々がお集まりくださいまして誠にありがとうございました。顧問の先生方には日ごろ私共少林寺拳法の活動にご配慮賜っていることについて厚く御礼申し上げたいと存じます。また、少林寺法の関係者の皆様には、いつも少林寺拳法の普及、発達のために大変な努力を捧げて下さっていることに対しましても、この席をお借りして心からの敬意と感謝を申し上げたいと存じます。

  この新年会は、平成時代最後の新年会ということになるわけでございますが、この平成という元号があと2カ月余りで消えてしまうことについて、殊更に感慨を抱いている少数の人間の一人が私でございます。ご存知の方もいらっしゃると思いますが、30年前に平成という元号を制定するについて、政府から元号制定有識者懇談会の委員に指名されました。あの有名な、当時の小渕官房長官が「平成」という額を掲げる30分前にその元号を決定した諮問委員会の委員の一人でございます。委員の皆さんは、それぞれ各界の名士の方でしたから、皆さんご年長で、8人の諮問委員のうち生存者は3人しかいないのだそうです。その3人の内の1人として深い感慨を覚えている次第でございます。

  実は、私は昭和3年(1928年)生まれです。皆さんほとんどご存じないと思いますが、昭和の初めごろに「昭和の子」という歌がありました。今は歌集のどこにも載っていません。「昭和 昭和 昭和の子供よ僕たちは・・・」という歌を私は今でも諳んじています。私はそのように昭和の初年に生まれ、文字通り昭和の子供として育ってきた。そういう者として、実は30年前平成の年号を決定した時に、ああ、昭和の子供である私が昭和の幕を閉じる役目を演じたのだなあ。こんな感慨を覚えたことを、再び大変強く思い出しております。従いまして、この平成が消える感慨と二つの大きな感慨を抱いているのが現在の私でございます。

  90歳になり、あと3ヶ月すると91歳。まあ随分、いろんな物事を見てまいりました。一つだけ、私は年寄りとして皆様に申し上げたいことがございます。それは、人間年をとればとるほど確かに色んな能力が衰えてきます。例えば足が弱くなるとか、記憶力が落ちるとか。従って年をとるということは、一面においてかつて持っていた能力をだんだん失うことなんだという、これは普通の理解です。それは間違いありません。

  ところが私は最近、特に80代になってから、大変強く感じていることがあります。それは、例えば記憶力が強いと他人がけしからんことをやったことをいつまでも恨んでいる。ところが記憶力が弱くなりその記憶が薄れてくると、恨みも薄れてくるという、そういう側面もあるのです。

  この席には女性の方もいらっしゃるのでちょっと失礼ですけれども、例えば性欲というものは人間にとっては大変なことなんですね。皆誰も言わないけれど、性に関連するいろんな欲望があるわけです。その欲望のことにどれだけの時間と関心を奪われてきたことでしょう。考えてごらんなさい。性欲がだんだん薄れてくると、初めてそのことに気づいてくるのです。

  そればかりではありません。今までの人生の中で大きな比重を占めてきたその性欲が、実はいろんな他の能力を押さえつけてきたことに気付くのです。逆に言うと、性欲が衰えるにつれて、今まで押さえつけられてきた能力がどんどん発達してくることに気付くのです。これは驚くべきことです。

  昨年の暮れに私は「明治維新の光と影」、副題として「この歴史から見えてきた日本の役割」という本を書きました。皆さんにもぜひ読んでいただきたいと思っていますが、その中には、およそすぐには気がつかないけれどもそう言われてみると、ああそうだな、と思うようなこと、他の誰もが言っていないようなことがいくつも出てくるのです。それがなんと驚くべきことに89歳、90歳になって初めて生まれてきたのです。このことに私は気がつきました。

  皆さん、皆さんもだんだん歳をとります。確かに残念ながら記憶力やいろんなものが失われていくけれども、他方において今まで押さえつけられていた能力が頭をもたげてくる、別な言葉でいうと新たな能力が生まれてくるものだということを皆さん、よく覚えておいてください。そして自信を持って生きていただきたいと思います。

  今年は、新たな元号のもとで、新たな年が始まります。そういう中でこの少林寺拳法がその独特な個性と長所を発揮して人のため世のために尽くしてくださるよう、そしてそれに皆様個人個人が貢献をしてくださるよう、そして皆様がご健勝のうちに活躍してくださることを心から念願して、私からの新年の挨拶とさせていただきます。ありがとうございました。